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2024/04
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 探しに出ていた使用人の一人に連れられて戻ってきた義弟の姿を見、ジュストは眼をむいた。額に大きな痣をこさえているし、上着も着ずに湿っぽく汚れたシャツを纏うのみ。とても貴族がするような格好ではない。
 「お、おい、キズキ」居間までやってくるのを待つのももどかしく、ジュストは玄関ホールで義弟を自ら出迎えた。
 「一体どうしたんだ、そのなりは!強盗にでも遭ったのか!?」
 ジュストに肩を掴まれても、キズキは唇を結んでそっぽを向いただけだった。
 「ジャックから聞いたぞ。朝早く、誰にも告げずに家を出たそうだな。何をするつもりだったんだ?今まで何をしていた?」
 重ねてジュストが詰問すると、こちらを見もしないままキズキが不愉快そうに舌打ちする。ジュストの眉間に皺が寄った。
 脇でおろおろしているメイドに、風呂を沸かすよう命じて追い払うと、ジュストはキズキの顔を覗き込んでさらに強い口調で続けた。
 「こっちを見なさい!お前は家族に対して態度が悪すぎる――私を困らせて楽しいのか!?」
 キズキが弾かれたように顔を上げた。昨日のようにいきなり怒り出すかと思って、ジュストは若干身構えたが、義弟の口から発せられた声音は弱々しかった。
 「……何もしてないよ……。あんたも、心配するのが嫌だったら、俺のことを家族と呼ぶことなんてやめればいいじゃないか」
 「は!?お、お前、何を言って」
 面食らったジュストの腕から逃れ、キズキがふらふらしながら廊下の向こうの自室へと歩いていく。
この家の主だけが、玄関にたった一人残された。
 
 
 テュリスは男を睨み付けたが、オドボールは悠然と煙草をくゆらせていた。柵に腰掛けて片眼だけでこちらを見上げているその様子は、本名すら定かでない無法者でもあり、冷徹に宣告を下す審問官のようでもあった。
 私が家族の異常に目をつむっていた?なぜ?嫉妬心からか?そんなことは……ありえない。私は剣士のはずだ。メイヤード家を守るための……。そんなことをして、許されるはずがないではないか。
 唐突に、ある光景が脳裏に蘇った。まだファロウ先生――当時オドボールの名乗っていた偽名――を剣の講師として雇う以前だったと思う。何の用事かはこれまた記憶にないが、とにかくテュリスは父の部屋の前に立った。
ノックしようと鍵のかかった扉に近付くと、向こう側からしゃくり上げるような微かな泣き声が聞こえた気がして、つい鍵穴から部屋の中を覗いてしまった。



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